テキスト内容 | 土着の神がある地域を占有支配する。皇統に連なる神に用いる「知る」「知らす」とは区別される。万葉集には全6例。まず、船に祭られた海の神(住吉の神など)を主体とするウシハク(5-894、6-1020、19-4245)がある。ここでのウシハクは、具体的には、海の神が航海の先導や安全の目的で、船首や船尾に祭られていることを意味する。特に6-1020では「住吉の 現人神(あらひとがみ) 船舳(ふなのへ)に うしはきたまひ」とあることから、船の舳先に人の姿で出現しているイメージで捉えられていたようである。海の神以外を主体とする例では、筑波山を支配する神を主体とする例(9-1759)、沖つ国(海のかなたの常世の国)を支配する冥界の神を主体とする例(16-3888)、皇神(すめかみ)(国の神)を主体とする例(17-4000)にウシハクが用いられている。記の神代条でも、皇祖神(天つ神)が地上の土着神(国つ神)に対して述べた「おまえが領有する(=うしはける)葦原中国(あしはらのなかつくに)は、私の御子の支配する国だ」という言葉の中に、ウシハクの語が登場している。また『延喜式』祝詞(祟神を遷し却る)にみられるウスハクも同意語である。 |
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