テキスト内容 | 贖物を神にささげて祓(はら)い、祈る様をいう。「贖」は「贖物」を指し、身のけがれやふりかかる災難を代わりに負わせて、流したり、祓ったりする物を指す。神代紀に、素戔嗚尊(すさのをのみこと)の乱行を「贖はしむる」ために、髪や爪をぬいたことが記されているが、この場合の贖物は「髪」「爪」である。万葉集では、下総国の防人歌に「国々の社の神に幣帛奉(ぬさまつ)り贖祈(あがこひ)すなむ妹がかなしさ」(20-4391)とある。この時の贖物は「幣帛」である。この歌の場合、上4句は、国々の社の神に対し、無事を祈り、願う我の行為を示し、その行為を妹の行為と重ねて思うことで妹を「かなし」と感じる心情を下句に詠う。「幣帛奉り」「贖祈すなむ」という行為が神に祈る表現であり、「祈(こ)ふ」が神仏にねがう意から転じて求める、欲しがる意をもつことから、『全釈』が「あがこひすらむ」を「我が恋すらむ」と解した。これ以降、「我が恋す」との解釈がされるようになったが「礪波山(となみやま)手向の神に幣奉り我が乞ひ禱まく」(17-4008)といった表現もあることを考えあわせると「贖祈す」は、幣帛を奉り、これを贖物として祈るという祭式における一連の行為を示すのが原義と考えられる。 |
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