テキスト内容 | 「あがふ」は「あがなふ」の古形。『名義抄』によれば、第二音節は清音であり、古代では「あかふ」と濁らず訓じていた。財物を代償として差し出して罪を祓い、無事や長命を祈る様をいう。神代紀に、素戔嗚尊の乱行を「贖はしむる」ために、「髪を抜きて…(中略)…手足の爪を抜きて贖ふ」とある。万葉集では「時つ風吹飯の浜に出で居つつ贖ふ命は妹がためこそ」(12-3201)とあり、愛しい人と別れたのち、再び逢うことを願って、自身の安寧を祈った。また「中臣の太祝詞言(ふとのりとごと)言ひ祓へ贖ふ命も誰がために汝(なれ)」(17-4031)のように供物をささげ、「中臣の太祝詞言」をもって身のけがれを祓うという一連の祭儀が想定される表現もあり、「贖ふ」祭儀の型をうかがうことができる。代償を支払う意から転じて、『霊異記』上巻7「亀の命を贖ヒテ放生し、現報を得て亀に助けらえし縁」には「壇越(だにをち)先に過(よき)り、量り贖(あか)ひ」のように、買い求める意を示す用例もある。→<a href="http://k-amc.kokugakuin.ac.jp/DM/detail.do?class_name=col_dsg&data_id=68839">ふとのりと〔太祝詞〕</a> |
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