【解説】田村の草子 巻一~巻三

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分野分類 CB歴史学
文化財分類 CB図書
資料形式 CBテキストデータベース
+登録番号(図書館資料ID)貴4209-4211*
+本タイトル【解説】田村の草子 巻一~巻三
+解説田村の草子  [貴4209-4211]

〈外題〉「たむら 上(~下)」(左肩原装題簽)
〈内題〉なし
〈巻冊〉3冊
〈体裁〉袋綴(四つ目綴)
〈書写年代〉寛文・延宝頃(1661~1680)
〈表紙寸法〉縦29.6糎×横18.4糎
〈書入・貼紙〉外箱蓋表「田村麿鬼人退治図」、外箱蓋裏「古竹老衲岳題鑒」、内箱蓋表「たむら一代記」(すべて墨書)
〈奥書〉なし
〈蔵書印〉なし
〈解題〉

室町時代物語(お伽草子)の奈良絵本。『田村の草子』は、藤原俊仁・俊宗父子による鬼神退治を描いた物語である。

『田村の草子』の諸本は、大きく写本系と流布本系に大別されるが、本書は写本系統に分類される一本である。本書には、他諸本にはない独自記事がいくつか散見される。

一つ目は、本文冒頭の俊仁・俊宗父子の系譜に言及する箇所で大織冠・藤原鎌足を登場させている点である。これは俊仁・俊宗が藤原氏の始祖である藤原鎌足とつながることを明示することで、二人の主人公性を強調し、権威づけする意図があったと推測される。

二つ目は、冥界から戻った鈴鹿御前が娑婆世界の女人と魂を入れ替えて蘇生する場面である。この鈴鹿御前と魂を入れ替えた女人について、多くの諸本が近江国の「とうかい」に住む女人とするのに対して、本書は唯一日向国の女人の魂と入れ替えたとする。そしてこの場面を「伊勢や日向の物語とはこの事なり」との一文によって結ぶところに特徴がある。

三つ目は、俊宗と鈴鹿御前が神として祀られた後、俊宗が所持していた「そはやの剣」と鎧が代々「富樫の家」に伝わるとし、「富樫の先祖の物語なり」との一文で物語を結ぶ点である。富樫氏は鎮守府将軍藤原利仁を始祖とする一族であり、この物語に登場する俊仁が藤原利仁に擬せられていることから、本書に「富樫の先祖の物語」であるという一文が加わったものと考えられる。

四つ目は、巻末に「桜狩り雨は降りきぬ同じくは濡るとも花の影に宿らん」(『拾遺和歌集』巻第一春50番 読人しらず歌)、「夜とともに花の匂ひを思ひやる心や峰に旅寝しつらん」(『千載和歌集』巻第一春上59番 仁和寺後入道覚性歌)の二首を引いている点である。ともに物語とまったく関係のない、桜の情景を詠んだ春歌であり、本書の末尾に引く意図ははっきりしない。想像をたくましくすれば、坂上田村麻呂が建立した清水寺の桜のイメージを想起させる意図があったとも考えられる。

なお、箱書の「古竹老衲岳」とは、江戸時代後期から明治時代の真宗大谷派大分専能寺住職平野聞恵(1809~1896)のことである。

〈翻刻〉

・山本岳史「國學院大學図書館所蔵 奈良絵本『田村の草子』の解題と翻刻」
  (『校史・学術資産研究』4 2012年3月)

〈参考〉

・『神道物語集』(古典文庫 1961年)

・『室町時代物語集』1(井上書房 1962年)

・『室町時代物語大成』7(角川書店 1979年)

・『大東急記念文庫善本叢刊中古・中世篇二 物語草子一』(汲古書院 2004年)

・金子恵里子「歴史民俗博物館蔵「田村の草子」翻刻と解題」(『専修国文』82 2008年1月)

・安藤秀幸「『鈴鹿の物語』の諸本―本文系統の整理を目指して―」

 (『国語国文』80-5 2011年5月)
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143207 37 2020/11/18 r.teshina 【解説】田村の草子 巻一~巻三 【解説】田村の草子 巻一~巻三 貴4209-4211* 02 024 1 田村の草子  [貴4209-4211]

〈外題〉「たむら 上(~下)」(左肩原装題簽)
〈内題〉なし
〈巻冊〉3冊
〈体裁〉袋綴(四つ目綴)
〈書写年代〉寛文・延宝頃(1661~1680)
〈表紙寸法〉縦29.6糎×横18.4糎
〈書入・貼紙〉外箱蓋表「田村麿鬼人退治図」、外箱蓋裏「古竹老衲岳題鑒」、内箱蓋表「たむら一代記」(すべて墨書)
〈奥書〉なし
〈蔵書印〉なし
〈解題〉

室町時代物語(お伽草子)の奈良絵本。『田村の草子』は、藤原俊仁・俊宗父子による鬼神退治を描いた物語である。

『田村の草子』の諸本は、大きく写本系と流布本系に大別されるが、本書は写本系統に分類される一本である。本書には、他諸本にはない独自記事がいくつか散見される。

一つ目は、本文冒頭の俊仁・俊宗父子の系譜に言及する箇所で大織冠・藤原鎌足を登場させている点である。これは俊仁・俊宗が藤原氏の始祖である藤原鎌足とつながることを明示することで、二人の主人公性を強調し、権威づけする意図があったと推測される。

二つ目は、冥界から戻った鈴鹿御前が娑婆世界の女人と魂を入れ替えて蘇生する場面である。この鈴鹿御前と魂を入れ替えた女人について、多くの諸本が近江国の「とうかい」に住む女人とするのに対して、本書は唯一日向国の女人の魂と入れ替えたとする。そしてこの場面を「伊勢や日向の物語とはこの事なり」との一文によって結ぶところに特徴がある。

三つ目は、俊宗と鈴鹿御前が神として祀られた後、俊宗が所持していた「そはやの剣」と鎧が代々「富樫の家」に伝わるとし、「富樫の先祖の物語なり」との一文で物語を結ぶ点である。富樫氏は鎮守府将軍藤原利仁を始祖とする一族であり、この物語に登場する俊仁が藤原利仁に擬せられていることから、本書に「富樫の先祖の物語」であるという一文が加わったものと考えられる。

四つ目は、巻末に「桜狩り雨は降りきぬ同じくは濡るとも花の影に宿らん」(『拾遺和歌集』巻第一春50番 読人しらず歌)、「夜とともに花の匂ひを思ひやる心や峰に旅寝しつらん」(『千載和歌集』巻第一春上59番 仁和寺後入道覚性歌)の二首を引いている点である。ともに物語とまったく関係のない、桜の情景を詠んだ春歌であり、本書の末尾に引く意図ははっきりしない。想像をたくましくすれば、坂上田村麻呂が建立した清水寺の桜のイメージを想起させる意図があったとも考えられる。

なお、箱書の「古竹老衲岳」とは、江戸時代後期から明治時代の真宗大谷派大分専能寺住職平野聞恵(1809~1896)のことである。

〈翻刻〉

・山本岳史「國學院大學図書館所蔵 奈良絵本『田村の草子』の解題と翻刻」
  (『校史・学術資産研究』4 2012年3月)

〈参考〉

・『神道物語集』(古典文庫 1961年)

・『室町時代物語集』1(井上書房 1962年)

・『室町時代物語大成』7(角川書店 1979年)

・『大東急記念文庫善本叢刊中古・中世篇二 物語草子一』(汲古書院 2004年)

・金子恵里子「歴史民俗博物館蔵「田村の草子」翻刻と解題」(『専修国文』82 2008年1月)

・安藤秀幸「『鈴鹿の物語』の諸本―本文系統の整理を目指して―」

 (『国語国文』80-5 2011年5月) 1

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