photo: KIOKU Keizo
日本の絵 ー執拗低音ー
作家名(日) | 三瀬夏之介 |
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作家名(英) | MISE Natsunosuke |
制作年 | 2015 |
素材・技法 | 雲肌麻紙、白麻紙、青墨、胡粉、金箔、アクリル、ハトメ、印刷物 |
サイズ | H346 × W940cm |
著作権表示 | © MISE Natsunosuke |
収蔵年 | 2016(作品購入年月日:2016/03/31) |
受入方法 | 購入 |
解説 | 1973年奈良県(日本)生まれ、山形県在住。 京都・奈良を拠点に制作活動を行っていた三瀬は、東北芸術工科大学で教鞭をとり始めた2009年頃から、東北の風土・風俗に対する民俗学的なアプローチを試み、その方法により現代の日本画の可能性を追求するようになる。三瀬は、墨のたらし込みやデカルコマニーによる偶発的なイメージ、細筆を用いて墨で繊細に描き出されたモチーフなどを組み合わせ、和紙の断片をひとつひとつ継ぎはぎしながら画面を構成・拡張させていく。そこには特定の地域に固有の様相ばかりではなく、実際に目にすることのできない宇宙の成り立ちや広がりまでも表現しようとする画家の意識が投影されている。 両作品は、当館にて開催の「コレクション展2 歴史、再生、そして未来」(2015–2016年)において、かつて別々の展覧会で発表された同タイトルの作品を上下に繋ぎ合わせて展示されたものである。作品タイトルに使用されている「執拗低音(ルビ:しつようていおん)」とは音楽用語であり、低音部において同一音型を執拗に反復する技法の一種である。思想史家の丸山眞男は、日本が外来思想を受け入れる際の、日本的変容の働きを説明する言葉としてこの用語を援用した。三瀬はこの言葉を背景に、支持体としての和紙の継ぎはぎを行い、コラージュの手法によって様々な要素を画面に取り込みながら、作品の主題はそのままに形態を大きく変容させていった。紐で繋がれた作品には、日の丸を連想させる円形の穴(ルビ:ヴォイド)が現れている。その穴の周縁には、今にも押しつぶされそうな2つの日本地図が認められ、その空虚さ、あるいは圧迫感は、現在の日本に対して抱く三瀬のイメージそのものといえる。北陸で生まれた「逆さ地図」を応用した「逆さ日本」によって、従来とは異なる視点から「日本」を捉え直すとともに、あえて国家を明示しない「万国旗」によって既存の枠組みを超越した、国境のない「あられもない世界」を表している。 |