不死鳥

作家名(日)柿沼康二
作家名(英)KAKINUMA Koji
制作年2013
素材・技法松煙墨 / 画仙紙
サイズH750 × W1100cm
著作権表示© KAKINUMA Koji
収蔵年2015(作品購入年月日:2015/03/31)
受入方法購入
解説1970年栃木県(日本)生まれ、東京都在住。

1986年、「昭和の三筆」のひとりである手島右卿に師事する。1993年、東京学芸大学教育学部芸術科書道専攻卒業。2006年、プリンストン大学客員書家として1年間渡米。「書はアートたるか、己はアーティストたるか」の命題に挑戦し続け、伝統的な書の技術と前衛的な精神による独自のスタイルを確立する。NHK大河ドラマ『風林火山』、北野武監督映画『アキレスと亀』等の題字の他、伝統書から特大筆によるダイナミックな超大作、ある特定の言葉を執拗に繰り返しながら書き綴る「トランスワーク」と称される独自の表現まで、その作風の幅は広い。

柿沼の書は、いわゆる「書」の概念を超えて人間表現の根源に迫るものである。国内外の書の歴史や日本の前衛書の系譜を受け継ぎながら、現代の書の可能性を追究した成果として現れる。音響メーカーの広告のために制作された《一:BOSE Ver.》は、自然数の最初の数である「一」を題材として、柿沼の高い表現力が直截的に表現されている。「一」は最もシンプルな文字のひとつであるが、書の基本である起筆・送筆・終筆の三折法を習得することができる最も重要な文字でもある。濃墨を用い、真っ白な紙の上に切れ味鋭く表現された書の基本的造形は、明快な白と黒の対比によって柿沼独自の間(ルビ:ま)を顕現させている。一方、《不死鳥》は書表現の限界に挑んだ巨大な作品であり、その圧倒的な存在感は周囲の空間をも自身に従属させるかのようである。大量の墨を含んだ太く重い筆、それを動かすたびに泥濘(ルビ:ぬかるみ)と化す巨大な紙、そして「不死鳥」という文字の形や意味との格闘。制作時間はわずか10分にも満たないが、この作品は数千年ともいわれる書の悠久の歴史と、自身のライフワークといえる古典臨書に費やした長い歳月に裏打ちされている。

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