photo: TOYONAGA Seiji, courtesy: Mizuma Art Gallery

waiting for awakening -chair-

作家名(日)宮永愛子
作家名(英)MIYANAGA Aiko
制作年2012
素材・技法ナフタリン、樹脂、ミクスト・メディア
サイズH110 × W67.9 × D55.8cm
著作権表示© MIYANAGA Aiko
収蔵年2014(作品購入年月日:2014/03/06)
受入方法購入
解説1974年京都府(日本)生まれ、神奈川県在住。

京都造形芸術大学美術学部彫刻コース卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻に進み、2008年に修士課程修了。2011年に第22回五島記念文化賞美術新人賞、2013年には日産アートアワード初代グランプリを受賞。時間や記憶についての省察をナフタリンや塩といった素材を使ったオブジェやインスタレーションで表現し、昇華や結晶化といった自然の変化を巧みに取り入れることで視覚化する作品で知られる。

直方体の樹脂の中に浮かび上がる、白い椅子。誰のものとも知れぬこの椅子はナフタリンで象られたものだ。ナフタリンは固体から気体へゆっくりと常温、常圧で昇華する物質で、防虫剤の一般成分である。宮永は大学の卒業制作時から、ナフタリンを作品の素材として使いながら様々な形を造形してきた。その多くは誰かが使っていた靴、鍵、バッグ、時計、シャツなど、暮らしの中でありふれた日用品で、個人の記憶や時間と深く結びついたものでもある。《waiting for awakening -chair-》(目覚めを待って―椅子)も、かつていた「誰か」が暖めた椅子であろう。ナフタリンの淡い白がその「誰か」の不在を際立たせ、記憶を象る沈黙を形作っている。しかし、椅子の足元に見える小さなシールを剥がせば、1箇所だけ開けられた空気穴によって止まった時が再び動き出す。同時にそれは椅子が昇華によって次第に形を失っていくことを意味する。時の加算が形の消失によって現れるという一見逆説的な転生によって、時は一方向に経過し、元に戻ることがないことをあらためて認識するのである。

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