photo: SAIKI Taku

無題

作家名(日)加藤泉
作家名(英)KATO Izumi
制作年2011
素材・技法アクリル、パステル、コラージュ / 紙
サイズH57 × W38cm
著作権表示© KATO Izumi
収蔵年2014(作品購入年月日:2014/03/06)
受入方法購入
解説1969年島根県(日本)生まれ、東京都在住。

1992年、武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2000年代以降、国内外の個展・グループ展での発表により、気鋭の画家として注目される。特に、第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2007年)に招待出品以降、日本のペインティングの新しい動向を知る上で重要な作家のひとりとして評価が高まる。加藤が描くのは、大きな頭、小さな手足、丸みが強調されたお腹を持ち、離れ気味な丸い目がどこか遠くを見つめる表情が印象的な人体像である。荒い目のカンヴァスに、筆を用いず直に指で絵具をのせていくスタイルで加藤が生み出す「人」たちは、山や水を想起させる背景のラインと緩やかに連続して繋がり、体の一部からしばしば植物を生やしながら、命の波動や、生物と自然が共振するリズムを見る者に伝える。2000年代半ばからは木彫彫刻も手掛け、また近年ではソフトビニール等の異素材も取り入れつつ、不思議な生命感を漂わせる立体作品も制作する。

大きな頭と小さな手足、丸みが強調された体格を持ち、離れ気味な丸い目がどこか遠くを見つめる表情が印象的な無着衣の人体像が描かれている。男女の性別はかろうじて分かるが、大人か子供かの判別は難しい。油彩による《無題》は、2枚のカンヴァス全体にわたって描かれているが、上下のパネルの背景に連続性はない。ひとりの人物が2つの異なった時空をまたいで存在しているかのようにも見え、プリミティブかつミステリアスな人体イメージと相まって、不思議な浮遊感が漂う。紙に描かれた《無題》の人物の背景には、時には暗い色、時には白に近い色で山が描かれている。生命を支える土壌としての「地」、あるいは混沌の時空としての「地」と接続しながら曖昧な表情で立つ者たち。加藤が描く「ヒト」は、その存在の根幹を担う生命と精神、それらを囲む世界の存在についての加藤自身の問いかけのようにも感じられる。

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