photo: WATANABE Osamu

更紗蒔絵十字架

作家名(日)「雲龍庵」北村辰夫
作家名(英)Unryuan, KITAMURA Tatsuo
制作年2007
素材・技法木、漆、金、貝
サイズH13 × W9.5 × D4.2cm
著作権表示© Unryuan, KITAMURA Tatsuo
収蔵年2013(作品購入年月日:2013/03/25)
受入方法購入
解説1952年石川県(日本)生まれ、同地在住。

北村辰夫は漆工房の主宰者兼プロデューサーで作品は「雲龍庵」の名で制作する。漆技法のうちでも、螺鈿、蒔絵に長けており、中でも印籠制作や杣田(ルビ:そまだ)技法の復興など、消えた細密技法の再興に力を入れてきた。近年では、「雲龍庵」工房で制作するオリジナルの作品だけでなく、木工、金工、房紐、彩絵、陶磁器など、多岐にわたる工芸技術を必要とする「十種香箱」「貝桶調度」などの江戸時代の大型の大名道具の復元などに力を注いで、若い世代への技術継承を集団的に行うプロジェクトを行っている。また、160年の歴史を持つアメリカ最古の時計ブランド「ウオルサム」とのコラボレーションなど、海外の有名ブランドや独立時計師との共同作業にも積極的に関わる。

雲龍庵の漆芸作品の多くに共通する特徴は、細密に施された螺鈿と切金にある。十字架、聖卵、伽羅箱とデザインや用途は異なるが、どれも過剰なほどの装飾性を持っており、金と青貝の作る文様の美しさに心打たれる。この技法を「彩影蒔絵」と名付け、青貝と切金を組み合わせた伝統技法である杣田細工に、新たに立体感を伴う陰影表現を与え、角度によって深みのある豊かな彩りを生み出す雲龍庵独自の技法としている。杣田細工は、17世紀に富山藩が京都から招聘した杣田清輔によって確立された細密な研ぎ出し蒔絵の一技法であったが、19世紀後半に消滅した。それを復興し、現代的な表現にまで高めたのが彩影技法であり、それをふんだんに使って作られたのがこれらの作品である。日本の伝統技法をもとにしながらもどこか日本離れしたデザイン感覚は雲龍庵の特徴であり、独自の世界観を持っている。

PageTop