photo: WATANABE Osamu

花蒔絵伽羅箱

作家名(日)「雲龍庵」北村辰夫
作家名(英)UNRYUAN, KITAMURA Tatsuo
制作年2011
素材・技法漆、麻布、金、銀、貝
サイズH5.4 × W8 × D8cm
著作権表示© Unryuan, KITAMURA Tatsuo
収蔵年2012(寄付採納年月日:2012/11/07)
受入方法寄贈
解説1952年石川県(日本)生まれ。

北村辰夫は、古典漆工作品の持つ高度な制作・加飾技法を自力で復興し、独創的造形センスと技の工夫開発によって蒔絵の世界に斬新で豊かな表現をもたらした。かつてのものづくりに倣い、漆芸工房を主宰、漆工棟梁として手掛ける一品一品を「雲龍庵」名で発表する。新規性に富む形姿、精緻でビジュアルな文様表現による強い訴求力を持つそれら作品は、漆工美の可能性を大きく拡張させてきわめて今日的である。一方、江戸期の大名蒔絵道具一式を多岐に及ぶ工芸技術を統合して復元制作するなど、若い世代への技術継承を図る企画を繰り返し立ち上げ、完成度の高い成果を達成させている。

雲龍庵の漆芸作品の多くに共通する特徴は、細密に施された螺鈿と切金にある。十字架、聖卵、伽羅箱とデザインや用途は異なるが、どれも過剰なほどの装飾性を持っており、金と青貝の作る文様の美しさに心打たれる。この技法を「彩影蒔絵」と名付け、青貝と切金を組み合わせた伝統技法である杣田(そまだ)細工に、新たに立体感を伴う陰影表現を与え、角度によって深みのある豊かな彩りを生み出す雲龍庵独自の技法としている。杣田細工は、17世紀に富山藩が京都から招聘した杣田清輔によって確立された細密な研出蒔絵の一技法であったが、19世紀後半に消滅した。それを復興し、他の蒔絵技法との融合で現代的な表現にまで高めたのが彩影技法であり、それをふんだんに使って作られたのがこれらの作品である。日本の伝統技法をもとにしながらもどこか日本離れしたデザイン感覚は雲龍庵の特徴であり、独自の世界観を持っている。

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