photo: KIOKU Keizo

無題(ここに境界はない)

作家名(日)シルパ・グプタ
作家名(英)Shilpa GUPTA
制作年2005-2006 /2011
素材・技法ビニールテープ
サイズサイズ可変
著作権表示© Shilpa GUPTA
収蔵年2012
受入方法購入
解説1976年ムンバイ(インド)生まれ、同地在住。

自国が抱える民族、宗教、ジェンダー、階級など、政治的、社会的問題や、時間や記憶に関わる作品を多数発表。彫刻、インスタレーション、インタラクティブなメディア作品、映像、写真など、手法や素材は多岐にわたる。作品にしばしば見られるテキストは、人々の心に潜む、喪失、不安、焦燥、疑念、欲望を投影し、詩的でありながら批評性の高いメッセージを伝えるものとして、強く印象に残る。

カシミール地方の領有権をめぐる多国間の争いは、20世紀前半から長きにわたって解決をみない、世界における地域紛争のひとつである。シルパ・グプタはとりわけインド・パキスタン間の衝突を幼少時から間近に感じながら、国境という実際には見えない線によって隔たる2国間の現実を批判している。「ここに境界はない」というシンプルな一文が書かれた黄色いプラスチックテープは、どこかに1本貼っただけでエリアを分けることになるという逆説的な状況を作り出す。内と外を明確に分けようとする人為的な方法は、内側に安全を確保し、外側に異国や異教、異文化といった、同化できないものを生み出してきたのである。今世紀に入り、ますます複雑化する世界の中で、本作品は私たちが信じている自由や安全の本質、想像上の境界の存在の再認識を鋭く促している。差異によって起きることへの誤解や無理解を、対立や抵抗ではない形で乗り越えようとする新世代の表現のひとつとしてあらためて見ることもできるであろう。

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