photo: SAIKI Taku

小さい闘士

作家名(日)ヤン・ファーブル
作家名(英)Jan FABRE
制作年1978/2006
素材・技法木、ポリエステル、画鋲、釘、角砂糖
サイズH140 × W60 × D60cm
著作権表示© Angelos bvba / Jan Fabre
→クレジット情報については解説・履歴を合わせて参照のうえ、確認すること(2023/08/14)
収蔵年2010
受入方法購入
解説1958年アントワープ(ベルギー)生まれ、同地在住。

ヤン・ファーブルは1980年代より美術、演劇、オペラ、パフォーマンス等、様々な分野で精力的な活動を展開する。昆虫やクモの観察から構築されたドローイング作品や、動物の死骸や剥製を取り入れた彫刻作品、また、血や塩などを用いたパフォーマンス、詩の創作を行ってきている。ファーブルの様々な表現活動は互いに結びつき関連しながら、今日のキリスト教文化やその意義を問いつつ、人間の存在の根源、生と死、宗教と科学、人間と芸術といった普遍的な問題を我々に突きつける。

ファーブルは自身の身体動作、血液、体液、骨、昆虫の屍や剥製を素材にした作品制作や、昆虫学で得た知識を取り入れたパフォーマンスを展開してきた。初期の作品、《小さい闘士》は12歳の作家を写した写真をもとに制作された自画像で、アーティストをキリスト同様、自己犠牲により新たな世界を拓く者とするファーブルの姿勢が投影されている。全体を覆う画鋲は、傷つき出血する人間の弱い皮膚に必要な強靭な保護膜、外的世界と対峙するための鎧、拳に挟んだ角砂糖は持たざる者が闘う時の武器を象徴する。《コノハムシ》には、青色のボールペンで繰り返し描かれた画面の中央にコノハムシ2匹が配置される。線で覆い尽くされた画面は本能的エネルギーを彷彿とさせ、この生の躍動感とコノハムシの屍との対比が独特なマチエールを生み出す。この物質感は、《昇りゆく天使たちの壁》において表面を覆う無数の玉虫により展開される。神でもなく人間でもない中間体の伝令者たる「天使」という意味を込めた本作品は、ドレス、亡骸といった「在るもの」により、「不在なもの」を浮き彫りにし、その間を行き交うかのように宙に漂う。

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