© Thomas Ruff

ma.r.s. 19

作家名(日)トーマス・ルフ
作家名(英)Thomas RUFF
制作年2011
素材・技法発色現像方式印画
サイズH255 × W185cm
著作権表示© Thomas Ruff
収蔵年2018
解説1958年ツェル・アム・ハルマースバッハ(ドイツ)生まれ、デュッセルドルフ在住。

アンドレアス・グルスキーやトーマス・シュトゥルートらとともにデュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント・ベッヒャーに学んだ「ベッヒャー・シューレ」として、1990年代以降、現代の写真表現をリードしてきた。初期に発表した高さ約2メートルにもなる巨大なポートレート作品で注目され、以降、建築、都市風景、ヌード、天体など様々なテーマの作品を展開、それらを通じ、我々の視覚や認識に深く組み込まれた「写真」というメディアの可能性を探求し続けている。

ネット上に氾濫する匿名のポルノグラフィにデジタル加工を施した「nudes」シリーズ(1999–)に続いて発表した「Substrate」シリーズ(2001–)では、トーマス・ルフはさらにイメージそのものの解体へと踏み込んでいる。日本の成人向けコミックから取り込んだ画像、つまり二次元の画面上に描写された非実在の人体表現を完全に解体し、リアルとヴァーチャルの境界すら存在しない、視覚情報として「無」の状態へと還元しつつ、どこか不穏な、うごめくような色面による抽象的なイメージとして再提示した。一方、NASAの火星探査船が捉えた火星の地表画像から制作された《ma.r.s. 19》では、緑、赤、近赤外線に相当する3つの波長で撮影された画像にデジタル処理を加え、さらに本来垂直に俯瞰されたアングルを改変し、未来において人類が火星に着陸する際に目にするであろう風景へと加工している。この作品において、ルフは擬似と仮想を重ねてまだ見ぬ光景を作り出し、過去のある時点の情報を伝えるはずの「写真」を、未来の時間を写す装置としつつ、さらに写真がこれまで担ってきた記録性や迫真性の追求を逆手に取り、イメージの虚構性をあぶり出している。

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