photo: KIOKU Keizo

作家名(日)井上有一
作家名(英)INOUE Yuichi
制作年1968
素材・技法ボンド墨 / 和紙
サイズH125 × W241.5cm
著作権表示© UNAC TOKYO
収蔵年2017(作品購入年月日:2017/03/31)
解説1916年東京都(日本)生まれ、1985年神奈川県にて逝去。

1950年、書家としての活動を開始し、翌々年に森田子龍、江口草玄らとともに在野の書団体「墨人会」を結成。国内外の抽象画家や批評家とも交流し、抽象絵画としての前衛書(墨象(ルビ:ぼくしょう))の確立を標榜した。西洋の美術の文脈における現代美術と親和性が高い前衛書であるが、とりわけ「一字書」をはじめとする井上の作品は、前衛書の中でもひときわ優れた造形的特質を示し、今日では現代美術における表現のひとつとして国内外において高く評価される。

井上が1955年から56年にかけて制作した、ケント紙に黒のエナメル塗料により表現した一連の抽象的な作品は、書というよりむしろ絵画的造形とみなすことができる。それらの制作期間は1年にも満たなかったが、書と美術の双方にまたがる表現手法は、その後の井上の書の方向性を決定づけるものとなった。1950年代後半に墨と筆による文字に回帰した井上は、その後、構図や描法、墨色の研究を進め、字句の意味に引きずられることの少ない、いわゆる「一字書」を数多く制作した。筆跡を強調するためにボンド墨と呼ばれる特殊な墨を用いるなど、書の技法を追究した結果、独特の筆圧と筆勢によって空間を形成する、絵画的な魅力を湛えた独自の書を完成させた。空間を舞い立つ旋風(ルビ:つむじかぜ)のようにも見える本作品の造形には、晩年の井上の充実した精神が筆意として表れている。

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