photo: SAIKI Taku

無題

作家名(日)フランシス・アリス
作家名(英)Francis ALŸS
制作年2001
素材・技法蝋 / 木製パネルにカンヴァス
サイズH38.2 × W46.2cm
著作権表示© Francis ALŸS
収蔵年2002
受入方法購入
解説1959年アントワープ(ベルギー)生まれ、メキシコシティ(メキシコ)在住。

トルネイ(ベルギー)とヴェネツィア(イタリア)で工学と建築を学んだ後、1986年に建築家としてメキシコへ派遣され、以後、メキシコシティに住み、制作活動を続ける。パフォーマンス、映像、写真、絵画、ドローイングなどの手法をとりながら、都市環境に身を置き「歩くこと」を手段、テーマとし、作品の主な基盤とする。日常生活の事柄や状況に寄り添いつつ客観的な視座をもって都市の断片を抽出、収集する彼の介入行為は、きわめて孤独な行為ながら、現代の社会や経済情勢、また、人間の存在といった根源的な問題と結びつき、さらには、移動、多義性、隠喩、逆説といった要素を孕む。こうして描かれる物語は、寓話や噂のように、見る者の中に多様に、無辺に紡がれていく。

山岳、水辺、洞窟、岩壁、炎などの荒涼とした風景に、機関銃を手に横たわる男と蠅、曲がった杖を持つ男、片足を壺にはめて歩く女、岸に上がろうとする裸の男と豚、くの字に体を曲げ落下する狐などが描かれている。また、林立する幹の集積を描いた絵画にはサパティスタ民族解放軍を写した新聞の切り抜きが添えられる。これら8点の絵画は2001年に発表された「デジャ・ヴュ」シリーズの一部である。同じモチーフの作品がほぼ対のように複数存在するこのシリーズは、見る者に奇妙な既視感(デジャ・ヴュ)を引き起こす。その後、同シリーズの多くの作品は加筆や塗り替えがなされ、2003年には『預言者と蠅』と題された書物に結実した経緯を持つ。フランシス・アリスの絵画は、ひとつひとつ独立して存在しつつ、様々な場に応じたインスタレーションによって多様な表情を生み出す無限の可能性を秘めている。軽やかにそして不安定に宙を漂うかのように去りゆく人物の姿を前に、見る者は既成概念を揺さぶられ、幻影に遭遇したかのような覚醒した感覚をそれぞれの日常に持ち帰ることになる。

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