photo: SAIKI Taku

沈金箱「いざよい」

作家名(日)前史雄
作家名(英)MAE Fumio
制作年1998
素材・技法漆、木
サイズH11.6 × W17.8 × D17.8cm
著作権表示© MAE Fumio
収蔵年2000(作品購入年月日:2000/09/27)
受入方法購入
解説1940年石川県(日本)生まれ、同地在住。

1963年に金沢美術工芸大学美術学科(日本画専攻)を卒業した後、沈金で重要無形文化財保持者(人間国宝)である父、前大峰に師事する。従来の沈金技法は線による表現が中心で平面的であったが、点彫り、線彫り、毛彫りなどの伝統的技法を受け継ぎつつ、自らノミを考案するなど試行錯誤を重ね、奥行きのある独特の抒情的な世界を表現している。1999年、重要無形文化財保持者(沈金)に認定される。

幾重にも板を差し合わせ厚く組み立てた箱を丸く削り、漆を施した器面全体に銀色に輝く白金が彩色されている。さらに対角線状に向かい合う2面は、カーボンブラックで黒く彩色され、その上には沈金で萩が表されている。沈金とは、漆塗りした器面に文様を彫り、その部分に漆を摺り込んだ後、金箔や金粉を埋めて彩色する技法である。黒と白の彩色は、夜の闇と月光を示し、小さくはめ込んだ青貝(鮑貝)は、萩の群生の中で月明かりを受け青光りする露を表しているという。蓋を開けると、箱の身の立ち上がり部分に十六夜の月が現れる。自己を抑制した厳しい技術と緻密な作業の集積から生まれた、独特の品格ある、詩情に満ちた作品である。

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