photo: SAIKI Taku

小宇宙(1)

作家名(日)アン・ウィルソン
作家名(英)Anne WILSON
制作年2005
素材・技法レース、糸、ピン、木
サイズH10 × W32 × D100cm
著作権表示© 2005 Anne Wilson
収蔵年2006(作品購入年月日:2006/03/31)
受入方法購入
解説1949年デトロイト(米国)生まれ、シカゴ在住。

アン・ウィルソンは、レースやリネン、髪や糸などの素材を用い、「縫う」「編む」「結びつける」などの手法を駆使しながら、文化的に構築された意味規範や人々の感覚を問うような作品を制作してきた。糸や髪を布に縫い留めた平面作品から、長さ10メートルにわたる立体作品に加え、映像作品、写真作品を手掛ける。ウィルソンは、私的で身体的な素材が想起させるある種の感情、糸片や針が紡ぎ出す繊細で複雑な表情に加え、素材が背負う過去の役割や記憶などを、自らの手を通して、濃密で雄弁な世界へと紡ぎ上げている。

《日々の物語》は1997年から翌年にかけて、日記を記すかのように作家が1日1点ずつ仕上げていった100点から成る作品。地模様が織り込まれたリネン上に、様々な色の髪の毛と糸とで、染みや傷跡、細菌のコロニーを想起させる痕跡が縫い残された。作家が日々選び取る布と髪とで無作為に縫い付けるフィジカル・ドローイングといえる。ヴィデオ・サウンド・インスタレーション《逸脱の行動》は、2002年の立体作品《トポロジーズ》を起点とする。同作品で表現された糸や針、レース片などが構成する世界が、《逸脱の行動》では、素材を少しずつ動かして1コマ1コマ撮影したものがアニメーション化され、映像に合わせて作られた音とともに命を吹き込まれ動き出した。ウィルソンの表現のエッセンスは、当館の展示室に設けられた窓の空間に合わせて制作された《小宇宙(1)》にも見ることができる。彼女が作り出す世界は、イタロ・カルヴィーノが描く、家々が蜘蛛の巣のように糸で張り巡らされた都市を連想させるが、同時に神経系やインターネットなども示唆している。

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