photo: KIOKU Keizo

火山

作家名(日)アンジェロ・フィロメーノ
作家名(英)Angelo FILOMENO
制作年2002
素材・技法刺繍、スワロフスキー製ラインストーン、クリスタル、ガーネット、ガラス / カンヴァスに張ったシルクシャンタン
サイズH173 × W173cm
著作権表示© Angelo FILOMENO
収蔵年2006(作品購入年月日:2006/03/31)
受入方法購入
解説1963年オストゥーニ(イタリア)生まれ、ニューヨーク(米国)在住。

金工職人の父と洋裁職人の母を持つフィロメーノは、7歳で仕立屋での修行を始め、縫製技術の基礎を身につけた。美術大学卒業後はファッション産業に携わり、ニューヨークに移住した後は舞台衣装の縫製を手掛けてきた。2000年初頭より刺繍作品の制作を開始。シルクや金銀糸、クリスタル等、煌めく素材を用いながら、渦巻くような曲線からなる装飾的な画面に、動植物に頭蓋骨や排泄物、血などを縫い表した作品には、生と死、華麗さと退廃の間で揺れ動く独自の世界観が表れている。2007年には第50回ヴェネツィア・ビエンナーレに出品。現在では彫刻も手掛け、表現の幅はさらに広がりつつある。

シルクに銀糸やクリスタルなどが丹念に縫い付けられた《火山》の画面は、ライトを受けて輝き、我々の目をまず夢心地にさせる。装飾的パターンを眺めていると、うねる曲線で縁取られた女性の骨盤のようなフォルムが浮かび上がる。その中心部からは赤いガーネットの束が流れ落ちんばかりに縫い留められ、傍らでは可憐な1輪の花が刺繍された。溢れ出す火山のマグマや女性の血液を連想させ、生/性が示唆される。一方《パラダイス・アイランズ》では、岩山に挟まれた湖の断面が刺繍された。水面には茶色い2つの島が浮かんでいるが、周囲には銀糸で刺繍された無数の蝿が飛び回り、遠目で島に見えていたものが、実は排泄物であることに気がつく。見た目の華麗さや、刺繍にまつわる「善良」で「誠実」なイメージの対局に位置するかのような、毒気溢れる表現が見る者を動揺させる。生と死、生と性、美と醜、意識と無意識などが複雑に絡み合い、人間の本質的な部分に及ぶ多層的な読み取りが可能である。

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