© Sarah SZE

喪失の美学

作家名(日)サラ・ジー
作家名(英)Sarah SZE
制作年2004
素材・技法ミクスト・メディア
サイズH1100 × W640 × D675cm
著作権表示© Sarah SZE
収蔵年2004
受入方法購入
解説1969年ボストン(米国)生まれ、ニューヨーク在住。

1997年にスクール・オブ・ヴィジュアル・アーツを卒業以降、作品が置かれる空間を強く意識した制作を行っている。綿棒、爪楊枝、ティッシュ、毛糸、プラスチック容器、メジャー、クリップや梯子等、大量生産された没個性的で安価なモノを用いて集積、配列したインスタレーションは、整然としながら混沌とし、絶妙なバランスと緊張感ある世界を生む。加えて、作品に組み込まれた扇風機の動力で起こる風や電気スタンドのランプが灯す光の様相は、あたかも作品がエネルギーを持ち、空間に侵略し、自発的に増幅する生命体のようである。サラ・ジーはありふれた日用品に息を吹き込み、新たな物語を見出そうとしている。

美術館の西側にある階段の吹き抜けに合わせて制作された《喪失の美学》は、多方向からのアプローチが考えられている。1階と地下を折り返しながら繋ぐ階段の構造を意識し、鑑賞者の階段の昇り降りの行動に寄り添うように作品は様々な表情を見せる。螺旋を描いたような構造体が宙に浮く様は上昇・下降の動きを同時に表し、重力と緊張状態を生み出す。その一方で、白を主体とした構造は軽さと明るさを与える。作品には綿棒、ペットボトル等のプラスチック容器、毛糸、メジャー、クリップ等、大量生産される身近でありふれた製品や道具と、黄色、青、オレンジといった建築現場や工具を思わせる色がある種の秩序をもって取り込まれている。こうして複雑に配列されたインスタレーションは、絶妙なバランスを保ちながら、中心性を希薄にし、様々な方向へ緊張状態を分散・展開させる。さらに、取り込まれた植物は全体に生命感を与え、扇風機の風、電気スタンドが発する光はエネルギーを想起させ、建築的構造の中に自然のプロセスを表現しようとしている。

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