photo: SAIKI Taku

菊蒔絵香合

作家名(日)寺井直次
作家名(英)TERAI Naoji
制作年1990
素材・技法漆、卵殻
サイズH2 × φ8cm
著作権表示© TERAI Naonori
収蔵年2004
受入方法寄贈
解説1912年石川県金沢市(日本)生まれ、1998年同地にて逝去。

石川県立工業学校漆工科描金部に学んだ後、東京美術学校工芸科漆工部に入学し、六角紫水、松田権六、山崎覚太郎らに師事。卒業後は理化学研究所にて金胎漆器を研究する。戦後は、1946年第1回日展への出品をもって創作活動を本格的に開始。卵殻技法を用いた繊細で豊かな表現力で評価を高めていった。また、アルミニウムを電解処理して素地を作る金胎技法の研究においても大きな業績を残した。1983年、勲四等瑞宝章を受章。1985年、重要無形文化財保持者に認定。

《金胎蒔絵水指 紫苑》などに代表されるアルミニウム素地の金胎漆器では、アルミニウムを鍛金で成形するからこそ実現できる繊細な張りを持つ曲面が、作品の品格と緊張感を高めている。また、卵殻の巧みな技術と卓越した造形感覚により、多くの作品において鳥や植物などのモチーフが深みと情感をもって表情豊かに表されている。作家が50代半ばに制作した《蒔絵水辺文盤》では、白い卵殻の裏側に色漆を施すことでほのかな朱の色味が生まれ、また、平文(ルビ:ひょうもん)や螺鈿、金粉蒔きなどの蒔絵の手法を駆使することで3羽の飛翔する鶴がスピード感をもって描かれた。鶴や鷺、菊や梅などを卵殻を用いて表した棗(ルビ:なつめ)や香合、万年筆も、描写的でありながら幻想性に満ちた作品で、より豊かな詩情を生み出している。

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