photo: SAIKI Taku

無題(花楽)

作家名(日)中川幸夫
作家名(英)NAKAGAWA Yukio
制作年1984
素材・技法花液、種子 / 画仙紙
サイズH135 × W135cm
著作権表示© NAKAGAWA Yukio
収蔵年2005(作品購入年月日:2005/03/31)
受入方法購入
解説1918年香川県(日本)生まれ、2012年同地にて逝去。

23歳の頃、池坊に属していた伯母からいけばなを習う。1949年「いけばな芸術」へ送った作品集が造園家・重森三玲に認められ、重森が主宰するいけばなの研究集団白東社に参加。1951年池坊を脱退。1956年に東京へ転居後は、組織、流派に属さず、弟子も取らずに自己の花を追求する。1984年、銀座で「花楽」と題した個展を開き好評を博す。前衛的で革新的な花との取り組み以外にも、ガラスや書を手掛ける。土門拳に薫陶を受け、自ら写真も撮影する。第2回織部賞(1999年)、第11回日本文化芸術振興賞(2004年)を受賞。

「花楽」シリーズは、1984年の個展(銀座自由が丘画廊)で発表された。花の液を画仙紙にたらし、その上に水を含ませた海綿をいくつも置いていくと、花液の段階では黒ずんでいた色が、時間の経過とともに鮮やかな紫や青、褐色へと変化して紙上に浮かび上がる。花を花液という形で抽出し、そこに秘められていた色を紙に定着させ作品とした中川の行為は、花の生命の根源に自らの身体をもって対峙し、その本質を掴み取ろうとしたものである。《無題(花楽)》は、同シリーズの中でも最大級の作品。大輪の花のように画面いっぱいに広がる液の滲みは、随所に残された黒い種とともに生命力を象徴的に表している。《聖なる書》は、本の形をしたガラスの重みによって半ば腐敗したカーネーションの花液が画仙紙に滲み出た瞬間を捉えた写真作品である。死にゆく花が発する生命の最後の煌きを自作ガラスとの組み合わせの中で露わにした本作は、中川の代表作《花坊主》(1973年)と同様の方向性を有している。

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