photo: NAKAMICHI Atsushi / Nacása & Partners

《支えられた記憶》のためのドローイング

作家名(日)舟越桂
作家名(英)FUNAKOSHI Katsura
制作年2001
素材・技法鉛筆 / 紙
サイズH116.8 × W89.7cm
著作権表示© FUNAKOSHI Katsura
収蔵年2002
受入方法寄贈
解説1951年岩手県(日本)生まれ、東京都在住。

舟越桂は1980年代より木彫による半身の人物像の制作を続けている。頭部と胴部にはクスノキを用いて彩色を施し、眼球には彩色した大理石をはめ込む手法は、その初期から一貫している。頭部の滑らかさや繊細さと、作品全体に残る鑿痕(ルビ:さっこん)の力強さの調和が特徴的である。一具象彫刻にとどまらず、神仏像などにも通じる精神性を宿した人物像には、静謐さと気高さが漂う。近年取り組んでいるスフィンクスのシリーズでは、人格や性別を超越するような普遍的な人物像の探求を行っている。

舟越の作品には、滑らかで繊細な頭部の仕上げと荒々しく力強い胴部とのバランス、木肌を残した彩色の手法が作り出す温かくも涼しげな空気感など、相反する特性の絶妙な組み合わせが特徴的である。《冬にふれる》は、1996年から1年をかけて制作した「冬」に関連するタイトルを持つ5体の男性像の1作目に当たる。制作に当たって重ねられた入念な準備素描が、作品に繊細さと緊張感をもたらしている。《支えられた記憶》では、ひとつの身体に2つの頭部が据えられている。この作品は、学生時代、自らもラガーマンであった舟越が実際に見たラグビーの試合の光景がもとになっている。試合中、脳震盪(ルビ:のうしんとう)を起こした選手がチームメイトに支えられながら競技場を去った場面を作品化しようと、作家は20年以上も構想を温めていたという。また、この作品には準備段階の素描が多く残っており、ひとりがもうひとりを抱きすくめる構図や2人の男の顔がひとつになっている構図など、試行錯誤を繰り返した様子が窺える。《「支えられた記憶」のためのドローイング》は、その最終的な素描の1点である。

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