中部のアマミノクロウサギ(つま先が白い個体)

アマミノクロウサギ ( Amami rabbit )

名称(ヨミ)アマミノクロウサギ
中分類ウサギ目
小分類ウサギ科
形態イエネコの成獣よりやや小さい。一般的なノウサギやカイウサギ(アナウサギ)より耳が短く、全体に暗褐色の体毛で、足の裏は特に黒が濃い。徳之島北部では、全体が黒褐色、すなわち黒っぽい個体が多い。中南部では茶褐色の個体が多く、足の裏の黒い部分とのコントラストがはっきりしている。また、しばしばつま先が白い個体が見られるのも中南部の特徴。尾は体の下についている。足には穴を掘ったり、斜面の上り下りに適した、長く頑丈な爪がある。

※参考
ウサギ目は、上あごの前歯2本の後ろに小さな歯が生えており計4本であるが、ネズミ目では計2本である点が分類上の決め手になっている。耳が短いウサギは本種のほか、スマトラウサギ、アラゲウサギ、メキシコウサギなどがいる。また、耳の長いネズミも存在し、ヨツユビトビネズミやオオミミトビネズミ、さらにウサギに近い外見からトビウサギと呼ばれる種もいる。
概要漢字で書くと、奄美野黒兎。動物では日本初の国指定天然記念物。2018年8月、国立研究開発法人国立環境研究所、筑波大学、福島大学、環境省の調査、分析により、天城町 平土野(へとの)と徳之島町 花徳(けどく)を結(むす)ぶ県道80号線の南北に分布するそれぞれの個体群は、遺伝的に数千年前に分化していることが判明した。また、国立科学博物館の冨田幸光氏によれば、ユーラシア大陸のウサギ類は800万年以前にいったん絶滅し、北米に渡って生き延びた種がベーリング海を渡って、再びユーラシアからアフリカに広まった可能性があるという。DNA解析によるメキシコウサギと共通の祖先から進化したという結果にも、合致すると思われる。なおかつ、現在ではムカシウサギ類は絶滅してしまったグループとされており、本種が原始的な特徴を残しているかどうかは、不明である。

【分布】
奄美大島、徳之島のみに生息。奄美大島では海岸部で見られることもあるが、徳之島ではほとんど山間部にある常緑広葉樹の森林に限られる。2015年3月30日に環境省が犬田布岳に設置した自動カメラに写り、徳之島三町全てに分布することが確認された。

※下原洞穴遺跡(西阿木名)の約6000年前の地層から、焦げた顎の骨などが発掘されている。当時は島全体が森林で、海岸近くにあった縄文人の集落周辺にも生息していたため、捕獲された考えらえる。

【生態】
不明な点が多い。主に夜行性だが、昼間でも行動することがある。「ピー」と極めて高い声で鳴く。草食で様々な草木の葉や種、樹皮なども食べる。昼間は主に岩の下の穴などで休む。行動する道を決めており、危険を回避する際も決まった道筋に沿って逃げようとする傾向が強く、林道等において逃げ道をふさぐ形で停車すると、立ち止まってしまうことがある。子育ては雌のみが行い、専用の穴を掘って子を産み、授乳後は土で穴をふさいで採餌に出る。岩の上や路上など、大雨でも水が流れない安定した場所に貯め糞をする。

【島内の目的情報】
夜間の林道で見られることが多い。事前に林道で糞のある場所を確認しておくと、見られる確率が高い。月夜には、あまり林道に出てこなくなる。

※林道での観察の注意点
自動車が接近した際、ぎりぎりまで草むらに隠れていて突然飛び出してくることがあるため、すぐに静止できる時速15キロ以下で走行することが望ましい。人の声、特に女性や子供の高い声に反応して逃げることが多く、注意が必要である。観察は車内から行い、エンジンをかけたままにしておくと、人の声などが伝わりにくく逃げにくい。

【アマミノクロウサギ観察小屋】
天城町役場企画課にて、アマミノクロウサギ観察小屋の使用許可申請し、夜間に監視カメラでモニターすることができる。(人数を問わず一組一日500円)
観察できる場所主に林道(美名田林道が観察しやすい)

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